COLUMN

人気カフェが近くにある物件に出店してもよいですか?

カフェの候補物件を見つけて心配そうに相談に来られる方からの質問です。答えから申し上げると、
「心配する条件ではありません。むしろ、歓迎してください。」
出店するための物件を見つけて、決断することは簡単ではありません。
予算や広さなど様々な条件をクリアする必要があります。気にいった街か、自分の生活圏との距離なども、個人オーナーの場合は大切です。

例えばスターバックスがなぜ出店したかを考えてみましょう

大手飲食チェーンでは店舗開発担当と呼ばれる立地開発のプロフェショナルが、商業施設や駅ビルなどを管理する企業の一般で知ることが出来ない貸店舗情報等の幅広い情報網から、入念な売上予測等の検討をもとに出店する場所を決定します。
スターバックスも例外ではなく、店舗の成功を左右する立地については相当の裏付けがあって、「出店場所」が決まっているはずです。つまり、「スターバックスに選ばれた場所である」=「スターバックスへ来るお客様が多数存在する土地柄」と考えることができます。

さて、スターバックスのコーヒーは、決して安い価格ではありません。最低でも300円超。コーヒー以外の少々高めなサイドメニュー も豊富です。缶コーヒーよりも高価なことはもちろん、他店にはもっと価格の安いコーヒーチェーンがありますし、ほぼ禁煙です。
それでも利用しようと思う人々は、スターバックスらしいスタイルやインテリア、サービス、情報といった付加価値を求めているのです。詳しい マーケティング手法は専門書にゆずりますが、スターバックスが出店している立地には、 「スターバックスを訪れる顧客層が少数ではない数存在する」と考えればよいのです。

顧客がスタバに行ってしまって個人店には来ないのでは?

心配は無用です。スターバックスが出店するような場所は、一日の顧客数の何百倍もの見込客を想定している立地です。
一方、個人店が期待する一日の顧客数はスターバックスの数時間の顧客数にも満たないかもしれません。
スターバックスの見込み客が多く存在する場所で、 魅力のあるカフェができれば、いつもと違うメニュー、落ち着ける空間などを求めていらっしゃるお客様が必ずいると考える方が、スタバをライバル視するよりもはるかに現実的です。

他のチェーン店や飲食店、カフェについても、競合がいるから心配するのではなく、むしろ積極的に差別化に知恵を絞ってください。

コムスペース代表 中川恵介 (なかがわけいすけ)

大手商業施設のプランニング会社にて、首都圏を中心に全国各地で多数の商業施設、ブランド、店舗の空間デザイン、設計に従事。その後店舗開発、リーシング、プロデュース、コンサルティング、 アートディレクション等に仕事の幅を広げ、2006年にコムスペースを起業。 カフェズ・キッチン講師。
シニア商業施設士、宅地建物取引士、防火安全技術者。