Aチェーン店のようなカフェをしたい。
都内近郊のターミナル駅近くに物件を見つけた方から、出店の相談 を受けました。Aチェーン店は、カフェチェーンの中でも、比較的年齢層の高い大人が一人で落ち着けるスペースや雰囲気を持った人気店です。相談者の物件より駅近くにあるAチェーン店は、一定の集客力があり売上と利益を確保している様子です。しかし、私ははっきりと申し上げました。
「同じ内容のお店を目指すのはおすすめできません。」
Aチェーン店は、オーナーがロイヤリティを払ってチェーン店として出店することも可能です。初期費用として物件取得費のほかに、店舗設計、内装工事、厨房設備、看板、教育費などで3000〜4000万円の資金が必要なお店です。広さも一定規模以上を要する作りとなっています。
良い雰囲気で流行っているなら成功できるのでは?
相談者の予定投資金額はおおよそ1/3。予定している物件もそう広くはありません。お話を伺うと、「良い雰囲気で流行っているからA チェーン店を目指せば成功できるのでは。」と考えている様子。 しかし、少ない投資金額で同じようなお店を目指しても、空間や設備を同じレベルにすることは不可能。スタッフやサービスも不十分なままメニューや形態だけ真似をしても、 「同じような流行る状況を作り出すのは難しいのでは?」とお伝えしました。 お店の内装イメージが好きだといった話であれば雰囲気づくりはできますが、チェーン化されるほど研究されつくしたお店をそのまま真似するのは得策ではありません。
むしろ、そこでは得られないサービスや空間を実現するのが個人店 ならではの強みです。オーナーが作り出す安らぎや落ち着き。気にいっているカラーや素材といったお店のデザイン要素を取り入れ、少ない投資でもお客様に喜んでいただける居心地の良さを提供することに力を入れ、自分のこだわりに応じた個性をメニューやサービスに打ち出すことが大切です。
個性と多店舗を両立したお店
大手カフェチェーンだけでなく、飲食店業界では複数店舗を経営し、 成功している企業が多く存在します。1店舗目が成功したノウハウを 活かし、2店舗、3店舗と増やしていくことで、複数店舗からの利益を得るしくみです。複数の店舗を経営することで、仕入の低コスト化と売上アップを実現し、企業やオーナーが大きな利益を得るスタイルは、スタンダードな成功の一つの形となっています。
カフェ業界では同じブランドの店舗だけではなく、顧客に飽きさせないようなマーケティングや人材教育に力を入れ、効率よく母体を共 有しながら、地域に応じた空間やメニューの差別化で安定した経営を続けている優良企業が増えています。
アパレルや不動産業界といった別の業界の企業が、資本力を武器に ブランドの宣伝やマーケティングを目的にカフェ経営を行っているケースもあります。
いずれにしても、こういった企業主体の店舗は、ある程度の資本力 を武器に、メニュー開発、広告、空間デザイン、人材に投資している特徴があります。お金をかければ良いわけではありませんが、裏付け のある投資によって優れた競争力が生まれるのも事実です。個人でカフェを出店する場合には、こうしたお店を研究し、良いところを取り入れる目を養いましょう。
飲食業は水商売です
そうはいっても、飲食業はお客さまの人気に左右される浮き沈みのはげしい商売です。資本力や知恵を結集して出店する企業といえども、全てが成功する訳ではありません。多店舗化する前は、必ず成功する一店舗目があります。投資額は違っても、一店舗目を成功させなければいけない点は、企業も個人も同じです。
企業の強みは人材なり、しくみなり、さまざまな力を終結させること のできる資金力やネットワークです。商店街のお店や昔ながらの個人店が苦戦してきた理由は、そういった企業の戦略を持った店舗に勝てなかったことも一因ですが、今やそこを逆手にとって、良いアイディアや方式を選択、アレンジして取り入れることが一昔前よりも実現しやすくなっているのも事実です。
企業の強みは人材なり、しくみなり、さまざまな力を集結させること のできる資金力やネットワークです。個人であっても、様々な人同士のつながりや知恵を結集することで、成功の道筋は必ず開けます。