経営者に必要な心得とは?
私はもともと大型の商業施設やビルに出店する店舗のデザイナーでしたが、ある頃から商業施設や駅ビルを管理する不動産会社等から、 「今の店が退店するので、次のお店を見つけてくれないか?」といった話や、アパレル、飲食店、新しいサービス業態の企業から「次のお店を出店したいが、儲かる場所はないか?」といった話が舞い込むようになりました。
立地診断を数値的な分析やマーケティングで行うコンサルタントや 企業もすでにありましたが、出店にあたっては、開発段階から私のように人や時代の流れをよみ、プランニングやデザインに活かす力が求められました。「中川さんの言ったとおり、この物件に(この店を)出店してよかった。」と、店舗経営者、不動産会社双方の評判も加勢しました。
出店したお店が継続して儲かり、家賃がビルや商業施設に長期的に 入るよう出店計画を立てるところからお店づくりに関わることで、多くのビルオーナー、起業家、オーナーシェフ、社長といった経営者に出会ってきました。
マーケティング、立地、投資等の失敗により、淘汰されるお店も多数見てきましたが、一貫して経営者の人たちに共通して感じたのは、売上・利益の追求と同時に経営の継続に対して貪欲だった点でした。
また、成功している企業の特徴は常に時代やお客様に向ける姿勢を常に進化させていました。
個人オーナーがカフェ出店する目的
個人でカフェを出店したいという人たちに会ったのは、カフェブームがはじまって数年たった2004年あたりからです。カフェズ・キッチン(カフェのビジネススクール)の空間をプロデュースする仕事がきっかけでした。
カフェズ・キッチンに通う皆さんは、それまで出会ってきた人達とはどう も様子が違いました。「カフェで飲食業を経営したい」というよりも、 「カフェオーナーになりたい。」、「こんなカフェがやりたい。」といった夢を抱いているのです。もちろん、今まで出会ってきた経営者の方々も様々な夢や志を持っておられましたが、その方々の貪欲な姿勢とは 一線を画す何かがありました。
例えば、趣味を活かしたい
あるとき、カフェズキッチンの生徒さんから「趣味のビーズを活かし字「自宅でカフェを開きたい。」と相談を受けました。自宅を新築するので、一階をカフェにしてそこでビーズスクールや展示を行い、地域の人と交流できるようにしたいというお話でした。
自宅の場所は商店街でもなく、元々お店をやっていたという訳でもなくお店の初心者でありながら、カフェを通して地域の人に集まってもらいたいという夢を持っていらっしゃるのです。
他にも、ダンスステージのあるカフェがしたい、ギャラリーのようなカフェがしたい、ドッグカフェをしたい、料理教室のできるカフェがしたい、得意の料理を皆さんに食べてもらいたい、と趣味やライフワークを共有できる場としてカフェをお考えの方々と多数お会いしました。
個人経営の強みを活かす
正直なところ最初は企業のビジネスライクな考え方とは異なる純粋 な思いにとまどいもありましたが、「カフェをはじめたい。」という夢を伺い、共有し、実現していく中で、カフェやお店が本来持つ魅力や面白さを感じました。
私は個人の方からのご相談でも、「継続的に経営が成り立つのか。」といった点を主眼にお話を進めています。立地やプランニングの時点 で最も大切なのは、 「個人経営の強みを最大限に活かした独自の事業計画を立てられるか。」だと考えています。
どれだけの売上や利益が必要で、どの程度の集客を見込んだお店づ くりが必要なのか、初期投資にどれだけお金をかけられるかによって、立地、広さの条件などが見えてきます。すでに立地が定まっている 場合も同じです。
個人経営にとっての人気店
基本的には個人がお店をはじめる場合に、本人(家族)の生活費を確保し、初期投資を回収し、最終的に利益を確保できるような事業計画が理想ですが、 「まずは生活費を確保できるスタイルを目指したい。」といった目標ではじめるケースも個人ならではの強みです。
企業の場合に確保しようとする飲食業界の売上や利益は、個人でカフェをはじめようとするケースとは「桁違い」です。必然的に、初期投資、原価、人件費などのコストに本社管理費用を加え、さらに利益を得るために、多くの人に受け入れられる店舗づくりが必要となります。
個人の場合、そこまで万人受けする必要がなければ、来て欲しいお 客様を絞ったお店づくりにもできます。地域に根差したカフェを目指すのであれば、日本全国の誰もが行きたくなるお店でなく、その地域の人が行きたくなるお店、つまりその地域の人にとっての「人気店」を目指せばよいのです。
「人気店」を目指すのは並大抵ではありませんが、夢や情熱と同時に、マーケティング的な視点や適切な目標設定を行い、経営者の視点やビジネス感覚を養うことで、十分に成功への道筋は開けます。
実際にそうやって続けている個人のカフェオーナーさんもたくさんいらっしゃるのです。